自分の「なぜ?」を仕事にできる点が研究職の最大の魅力
野村 紀通
Nomura Norimichi- 感染症
研究者を目指したきっかけ
Chanceいつ頃、研究者を⽬指そうと思いましたか︖
高校生
研究者を目指すキッカケは何でしたか?
高校時代、数学者の伝記を読み、紙と鉛筆だけで世界の真理に迫る姿に強く憧れ、研究者を志しました。大学に進学後、自分の数学の才能には限界があると感じながらも研究への思いは捨てきれず、さまざまな分野を探求しました。
転機となったのは、大学院時代に参加した鹿児島の海底熱水噴出口の調査です。極限環境に生きる微生物を自ら分離し、「生命はここまで多様なのか」と衝撃を受けました。この体験から、生命の仕組みを分子レベルで解き明かしたいと考え、生命科学の道に進みました。
これまでのキャリアで最も印象に残っているエピソード
研究者としてキャリアを始めた当初、極限環境微生物の研究から構造生物学へと転向し、当時最も難しいとされていたヒト膜蛋白質の構造解析に挑戦しました。しかし実験は思うように進まず、10年近く論文成果が出ない時期が続きました。それでも試行錯誤を重ねる中で、少しずつ独自の手法を確立し、突破口を見いだすことができました。
この経験から、困難な課題ほど粘り強く向き合うことの重要性を学びました。同時に、支えてくださった恩師や周囲の人々のご支援があってこそ今の自分があると強く実感しています。
学生時代の経験
School days⾼校時代について
高校時代、数学者の伝記を読んだことをきっかけに数学にのめり込み、「数学セミナー」という雑誌の問題に夢中で取り組んでいました。受験勉強そっちのけで難問に挑戦し、なかなか解けず悩む日々でしたが、あるとき幾何の問題を解くことができ、その解法が自分の名前とともに誌面に掲載されました。自分の考えが認められたことがとても嬉しく、「考えることの楽しさ」を実感した忘れられない経験です。
大学/大学院時代について
大学に入って自分の数学の才能には限界があると感じましたが、研究者への思いは諦めきれず、さまざまな分野に触れました。大きな転機となったのは、大学院時代に参加した鹿児島の海底熱水噴出口の調査です。極限環境に生きる微生物を自ら分離し、「生命はこんな環境でも存在できるのか」と強い衝撃を受けました。この経験が、生命を分子レベルで理解したいという現在の研究につながっています。
留学時について
博士取得直後は、朝から晩まで実験に没頭し、ほとんど研究室で過ごす生活を送っていました。ところが米国の留学先では、研究者たちは朝早くから集中して働き、夕方には帰宅して自分の時間も大切にしていました。それでも質の高い研究成果を出している姿を見て、「長く働くことが良い研究につながるとは限らない」と気づかされました。この経験は、研究の進め方や働き方を見直す大きなきっかけになりました。
中⾼⽣の頃の⾃分に、今伝えたいことは︖
Message遠回りに見える経験も、あとから必ずつながるので安心してほしい、と伝えたいです。
私自身、数学に打ち込んだ時期もあれば、分野を迷って回り道をした時期もありましたが、そのすべてが今の研究に生きています。すぐに結果が出なくても、自分が「面白い」と思うことを大切に、じっくり続けてほしいと思います。迷ってもいいのですが、諦めずに思いをずっと持ち続けることが大切です。
研究に向き合う姿勢
Attitude研究テーマや『問い』は、どのようにして見つけるのですか?
論文を読んで「ここはまだ分かっていない」と感じた部分や、自分の実験結果の中で説明できない点がヒントになります。「なぜこうなるのか?」と違和感を持ったところに、新しい研究テーマが隠れていることが多いです。大きな発見は、こうした小さな疑問の積み重ねから生まれることが多いと感じています。
実験が思うような結果にならなかったり、仮説どおりにならなかったりした場合、どのように乗り越えますか?
まずは「なぜうまくいかないのか」を徹底的に考えます。
実験条件を見直したり、別の方法を試したり、周囲の人に相談することも重要です。諦めずに頭の片隅に置いて、しばらく放っておくと、あるとき突然、解決法が頭に浮かんできたりすることもあります。
私自身も長い間成果が出ない時期がありましたが、その中で試行錯誤を重ねることで少しずつ前に進むことができました。行き詰まりは珍しいことではなく、むしろ研究の一部だと思っています。
研究を進める上で、特に重要だと考えているスキルや能力は何ですか?
特に重要なのは、「問いを立てる力」と「考え続ける力」だと思います。
知識や技術ももちろん大切ですが、それ以上に「なぜ?」と考え続ける姿勢が研究の質を大きく左右します。
また、自分一人で抱え込まず、他の人と議論する力もとても重要です。
研究者になって良かったことは何ですか?
まだ誰も知らないことを、自分の手で明らかにできる可能性があることです。
新しい現象や仕組みを初めて理解できたときの喜びは、他ではなかなか味わえないものだと思います。また、自分の研究が将来の医療や社会に役立つ可能性があることも、大きなやりがいになっています。
研究者として働くことの魅力は何ですか?
自分の「なぜ?」を仕事にできる点が最大の魅力です。
興味を持ったことを深く追求し、それを新しい知識として社会に還元できる仕事はとても魅力的だと思います。また、世界中の研究者とつながりながら、一つの大きな問題に挑戦できることも、この仕事ならではの面白さです。
研究者の仕事と日常
Life研究者は毎日何をしているんですか?
実験だけでなく、論文を読んだり、データを解析したり、研究の計画を立てたりと、さまざまなことをしています。また、学生や共同研究者と議論したり、研究費の申請書を書いたりすることも重要な仕事です。イメージとしては、「考える時間」と「手を動かす時間」が半々くらいで、その両方を行き来しながら研究を進めています。
休みの日は何をしていますか?
完全に休む日もあれば、論文をゆっくり読んだり、新しいアイデアを考えたりすることもあります。研究は考えることが中心なので、日常生活の中でふとした瞬間にヒントが浮かぶこともあります。とはいえ、リフレッシュすることもとても大切なので、長時間散歩をしたり、意識して仕事から離れる時間も作るようにしています。