第1回:女性研究者の夏
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大阪大学 免疫学フロンティア研究センター
北本 宗子コラム
columnこの原稿を書いているのは4月下旬。暦の上ではまだ晩春だが、連日の強い陽射しのせいで、今年の春もあっという間に過ぎ去ってしまったように感じる。私の大好きな夏が、もうすぐやってくる。我が家の夏はとにかく忙しい。川、海、BBQ、クワガタ採集、キャンプ、誕生日、親戚の集いなど、予定が目白押しだ。活動量がぐんと上がり、せわしなくも楽しい季節である。
一方、研究者としても多忙な時期の到来である。年度初めの煩わしい事務手続きを終えたかと思えば、グラントの申請や審査が立て続けにやってくる。今年はどのグラントにどのネタで挑むか、頭を悩ませながら蛇行と推敲を重ねる。その傍ら、他人の申請書にも目を通す日々。来年度以降の研究の舵取りを行い、研究キャリアの行方を左右する、研究者にとっての勝負の季節もまた、夏である。
ところで、申請書の作成や審査にあたって募集要項に目を通すと、昨今よく見かける「女性研究者枠」という言葉に、どうしても複雑な思いを抱いてしまう。グラントに限らず、人材募集やシンポジウムの演者選定でも、女性枠が設けられているケースは多い。たとえ純粋にサイエンスの内容が評価されて採択されたとしても、「女性だから選ばれたのではないか?」ーそんな懸念が頭をよぎる。
もちろん、面と向かってそう言われた経験はない。しかし、こうも大々的に制度化されている現状を鑑みると、この風潮に同様の違和感を抱きつつ胸にしまっている人は少なくないのではと思う。せめて、「女性ポイント」で獲得したと思われないよう、成果で示す必要がある。そう自分に課すプレッシャーは、決して小さくはない。 とはいえ私自身、女性枠のおかげで貴重な機会を得て、実績を積み、CV(履歴書)を充実させてきた当事者でもある。だからこそ、葛藤と恩恵の間で揺れ動くジレンマが、常に私の中に居座っている。
こうした複雑な思いを抱えつつも、ふと立ち止まって考えることがある。今日、「女性研究者」という言葉が社会に浸透したのは、先人の女性研究者の方々が、今よりも研究者に対してライフイベント支援が整っていない厳しい状況下で、研究の道標を築きあげてくださったからにほかならない。ロールモデルとして女性研究者の先輩方が示してくださった背中があったからこそ、私たちは今、多様な選択肢の中で研究を続けることができている。
微力ながらも私も、後に続く世代がより快適な環境で、楽しみながら研究に取り組めるよう、手本となる女性研究者でありたい。そう思い、背筋を正して今日もピペットマンを握る。そして週末になれば、日焼け止めを片手に外へ飛び出す。
今年もきっと楽しい夏になる。
クエスチョン・リレー
Question Relay研究者リレーコラムでは、執筆者が前回の質問に答え、次回の執筆者へ新たな問いを投げかける『クエスチョン・リレー』を行っています。
かけコミスタッフから、北本先生への質問
研究室のデスクに、これだけは欠かせないという『お守り』やこだわりアイテムはありますか?
子供たちが描いてくれた絵です。疲れた時や頭がパンクしそうな時に目を向けると、気持ちを切り替えることができます。
北本先生から、次の研究者への質問