メインコンテンツへスキップ メインコンテンツへスキップ
研究コラム

Column

第2回:2027年度の科学技術予算が過去最大に —— 研究者に求められる「覚悟」と「独創性」

記事提供

一般財団法人化学及血清療法研究所

馬場 秀夫
記事提供者の写真

コラム

column

 前回のコラムにおいて、私は日本の研究力低下に関する現状を分析し、科学技術立国としての再生に向けた処方箋を論じた。その背景には、研究開発や人への投資不足、若手研究者の減少、ならびに基盤的経費の削減といった複合的な要因が存在する。今後、我が国が真の「科学技術立国」として再興するためには、人材への大胆な投資、イノベーションを生み出す環境の再構築、若手研究者支援の拡充、そして産官学連携の強化が不可欠であると強調させていただいた。

 これまで日本は、アジア諸国の中でも比較的多のノーベル賞受賞者を輩出してきた。受賞につながる画期的な研究成果の多くは、研究者が平均37歳の頃に達成されたものと言われている。そして、その成果が多角的な観点から再検証され、社会や人々の生活に役立つ技術として応用・評価されるまでに、約30年という歳月を要する。この時間の長さは、決定的な研究成果が、発想が柔軟で失敗を恐れずに創造的課題へ挑戦できる若年期に生まれることが多い事実を物語っている。だからこそ、若い研究者に十分な資金を投入し、果敢にチャレンジできる環境を整えることが極めて重要なのだ。

 現在、高市政権下においては、国の成長を力強く牽引する目的で、17の重点領域(半導体・先端エレクトロニクス、AI・大規模言語モデル、量子技術、宇宙、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器など)へ官民あわせた集中投資を行う方針が打たれている。この方針を受け、2027年度予算の概算要求における国の科学技術関係予算は10兆9,983億円に達し、2026年度当初予算比で73.3%増という大幅な伸びを示した。  

 文部科学省の予算も4兆1,100億円となり、その中でも科学研究費助成事業(科研費)は前年度比で倍増となる4,552億円、国立大学への運営費交付金も過去最高額の1兆2,512億円に上る。高市首相の「基礎研究力は国力に直結する」という確固たる認識が国家予算に具体化されたものであり、国の将来を見据えた積極的な施策として高く評価したい。

  しかしながら、研究助成予算の増額という喜ばしい追い風をどのように活かし、どのような成果を生み出していくかは、最終的に個々の研究者や研究グループの腕と意識に委ねられている。研究費を獲得することだけを目的とした安易な計画立案や、一時のトレンドを追うだけの研究は厳に慎むべきである。研究者には、中長期的な明確なビジョンを掲げ、地道な努力の先に大きなイノベーションをもたらす独創的かつ挑戦的な研究を完遂してほしいと切に願う。

 現代において研究手法は高度化・多様化しており、一流の学術誌に論文が掲載されるためには、極めて質の高い成果と多大な時間・経費が要求される。単一の研究グループのみで完結することが難しくなっているからこそ、異分野融合やAIの活用、大学や研究機関の枠を超えた共同研究、さらには国際共同研究を積極的に模索することが鍵となる。互いの強みを持ち寄り、大きな成果へと取りまとめて発信していく姿勢が不可欠である。

 科学技術関連予算が増額され、国を挙げて基礎研究を推進する機運が高まった今こそ、千載一遇の好機である。この好機を生かすべく、研究者一人ひとりが情熱と誇りを持ち、十分な労力を投じて世界に誇れる研究成果を上げていただくことを心より期待している。